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大野一美さんの声 第2回




自然と「一人ではない」と思える場所に



ドナルド・マクドナルド・ハウス せたがや 大野一美さん



2024年で設立から23年目を迎える「ドナルド・マクドナルド・ハウス せたがや」。ボランティアなしには、ハウスは成り立たないと、ハウスマネージャーの大野一美さんは話します。ひとりひとりとの信頼関係を大切に、向き合うハウスの日常のお話です。



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ベッドルームは、くつろぎのための工夫がいっぱい


こちらは、ご家族が滞在するお部屋です。

23年目のベッドルームとは思えない? そうですね、とても綺麗に使っていただいています。このベッドカバーのキルトは、ボランティアさんによるものです。キルトはひとつひとつが手づくり。

前回「運営はすべて募金と寄付金で」というお話をしましたが、ドナルド・マクドナルド・ハウス せたがや(以下、せたがやハウス)はボランティアさんなしには成り立たないということも大きなポイントです。現在、205名のボランティアの登録があり、24時間365日体制で、それぞれの仕事をとても丁寧にしてくださっています。


たとえばこのベッドの並び。「今日は、お父さんとお母さん、お2人が利用します」とボランティアさんにお伝えすると、こうやってベッドが2つ並んだ形でセットされます。これが「お父さんとお母さんと2歳のお子さんの3人です」と伝えると、ベッドを真ん中でくっつけてセットしてくださる。もしくは「お父さんとお母さんと0歳の赤ちゃんです」と言うと、ベッドを2台壁側にくっつけた状態でセットされているんです。



ベッドルーム。宿泊利用するゲストのために、準備がされていた。



私たちは細かな指示まではしないのですが、想像力と思いやりをもってボランティアさんは動いてくださるんです。カーネーションズ・メンバーの古舘美樹さんにも、ボランティア体験をしていただいたことがありましたね。その節はありがとうございました。

せたがやハウスのお部屋には、テレビを置いていません。お部屋にこもりきりにならないでいただきたいのと、静かにご自分と向き合う時間にしてほしいという思いから、すべてのハウスにテレビはありません。

デスクの上に、ノートがあるでしょう。滞在するご家族がいまの気持ちを書き、整理をしたり、誰にも言えなかった想いをこっそりと吐露するノートにもなっています。




2階のキッチンに移動しましょう。

こちらで観ていただきたいのが、この刺繍です。ちょっと変わった刺繍ですよね。これは、先ほどのノートの1ページを抜粋したものです。当時のご家族の気持ちが伝わってきますね。これもボランティアさんによるものです。



 “いっぱい大変なことがあるけど、その度に家族の大切さを知ります。仲間の優しさを知ります。いろんな世界を知ります。我が家は鈍行列車。えっちらおっちら時々途中下車。みんなみたいに速く目的地には着かない。だけど、きっときっと楽しい旅になる。そう信じて、明日、また出発しま〜す! いやあ、でも今回の途中下車は疲れたぁ〜”




必要な交流が生まれるリビング


キッチンは、全部で6つあります。それぞれが自由に使っていただけるものです。冷蔵庫もお部屋ごとにわかれています。自転車をお貸し出ししているので、近所のスーパーまで買い物に行かれる方も。なるべく日常生活を過ごしていただけるようにと、ここでお料理をして、リビングで過ごしていただいています。

ここでは、こんなシーンが生まれるんです。

とある、お母さん。はじめは知り合いもいないし、リビングでごはんを食べるのは、ちょっと心細いな、と感じているはずですよね。けれども、この場に座っていると、誰かが「こんにちは」とか「おはようございます」と挨拶からはじまります。

そうして、今度病院へ行くと、その人に会って、帰るとまたリビングで会って……といううちに、なんとなく話をするようになる。子どものことを話したり、さまざまな情報を交換したり、ということが誰かがうながすわけでもなく、自然に生じるんです。

お話を聞いてみるとこんなことをおっしゃる方も。

「私は性格的に交流をしたいタイプではないんですが、ただ、リビングにいることによって、私一人じゃないんだなっていうことを感じました。ここで食事ができてよかったです」

せたがやハウスが大切にしている場所のひとつです。




リビング。春には窓の外に一面の桜が咲く。「ミールプログラム」というボランティア活動では、月に8組ほどの企業や団体がごはんを作りにやってくる。



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第3回につづく



「ドナルド・マクドナルド・ハウス」公式YOUTUBEも合わせてご覧ください




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