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天畠万貴子さんの声 第2回

更新日:1月11日




「有償と無償のお話」



天畠万貴子さん



重度障がいをもちながら研究者として活躍する息子・大輔さんを支える万貴子さん。大輔さんが大学に進学したのときのことを伺いました。



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大輔は学校を卒業し、大学へ進みました。と、一言で言ってしまえることですが、試験を受けさせてもらえるようになるまで、3年かかりました。養護学校を卒業した4年後に、ルーテル学院大学に入学しました。

いざ受験をして大学に行くにしても、授業時間のノートテイク(要約筆記)、板書やプリントの読み上げ、コミュニケーションの介助、教室の移動、トイレ、食事……24時間介助を受けながら過ごしている大輔にはあらゆるサポートが必要です。二人で、お手伝いしてくれる人たちを見つけるために、いろんなことを試しました。

ボランティア募集のチラシを作って、大学の構内で配るんです。いまでこそ、介助のシステムが定着していますが、親子で泣いて訴えました。「助けてください!困っています!」って。当時は「かわいそう」に人が寄ってきたんですよね。あとは商品券を配ったり、実際に家で手料理を食べてもらったり。そのくらい、ボランティア集めには切羽詰まっていましたね……。

結果、学生たちを中心としたボランティアチームができて、大学にいるあいだの大輔のサポート体制ができました。彼の大学在学中の4年間、ただの一度もノートテイクをすることがありませんでした。いつかわたしがやることになるだろうと思って、教室で待機していたんです。そうしたら、「ただ待機しているだけじゃなくて、お母さんも授業を受けていったらいいですよ」と教授に言っていただいて。わたしは一番前で、大輔は一番うしろで、親子で同じ授業を受けていました。

ただ、ボランティアですからドタキャンがあるんですよね。ノートテイクをする予定の子が来れなくなった、というときに「誰かー!ノートテイクお願いしますー!」って言うの。そうすると、はいはーい!ってすぐに手が上がって代役が見つかったんです。

このことを卒業式のときに、学長さんにお伝えしました。

「ボランティアを学生たちがしていたんではなくて、大輔くんがみんなのボランティアをしてくれたんです。学生は大輔くんから学び、いろんなものを受け取っていた。大学にとってもよかったです」と言ってもらいました。

ボランティアチームの100人ほどのメンバーに「大輔のサポートをするとしたら、有償か無償、どっちがいい?」と聞いて(投票して)みたことがあるんです。有償がいいという子と、大輔が好きだからやってるだけでお金なんていらないという子が、結局は半々になりました。

大輔のためにこんなにも無償でいいという子がいるなんて!と喜びたいところですが、実はこの有償と無償の差は大きいものがありました。無償は、ドタキャンされても文句は言えないし、いい加減でもいいという甘えの関係のようなものができてしまうという側面があります。逆に有償にする場合は、こちらの要望をはっきり言うことができる。

大輔はサポートする人たちに対してどうやって有償化するかにも、4年間取り組みました。

大学にとっても、重度障害をもつ学生の受け入れははじめてのことで、時間はかかりましたが、大輔が在学するルーテル学院大学はボランティアの有償化をスタートすることになりました。

現在は、大輔は自らが代表となって「一般社団法人わをん」を設立し、不登校やひきこもりの子どもたちをサポートしています。大輔は、子どもたちに自分の車椅子を押してもらったり、積極的にサポートをしてもらうんです。そうすると、だんだんと一人じゃないことがわかってくる。みんなが共存して、社会があるんだと。

今後、子どもたちのためにフリースクールをつくりたいね、という話も出ています。そのためには、ビジネス化が不可欠だと思っています。行政に頼るだけではなく、新しい切り口で、継続できるやりかたを世の中に提案していけるといいですよね。




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第3回につづく