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鬼丸昌也さんの声 第2回

更新日:2023年2月6日




ウクライナのいま



テラ・ルネッサンス 鬼丸昌也さん



「できることがあるはず」とテラ・ルネッサンスを立ち上げ、紛争地への支援活動をする鬼丸さん。現在もなお、心配な状態が続くウクライナの現状を伺いました。



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2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻しました。

この紛争の大きな特徴としては、かつてないスピードで多くの難民が生まれたことです。支援の追いついていない現状を見て、「可能な限り、できることを早期に始めよう!」と、3月から先遣隊としてスタッフ2名を派遣しました。隣国ハンガリーを拠点として、ウクライナ難民・避難民への支援活動を開始しました。


ここですこし用語の説明を。

「難民」とは海外にのがれた人々のことを言います。ドイツやオーストリアなど西ヨーロッパにのがれた人々も、隣国のハンガリーにのがれた人々も難民です。一方「避難民」とは、ウクライナ国内に留まる人のこと。ウクライナ西部のハンガリーと国境を接するザカルパッチャ州に滞在する避難民だけでも30万人と言われています(2022年5月現在)。

わたしたちは「取り残された人は誰なのか?」をテーマに、現地(ハンガリー、ウクライナ・ザカルパッチャ州)へ入りました。そこで見えてきたのは、家族の問題でした。現在、ウクライナでは、成人男性の出国を禁じています。残された母子だけで国外へ避難することは、精神的にも経済的にも困難、というケースが少なくないのです。「前線で戦う夫とは離れたくない」と言うひともありました。難民問題は、ほかの国ではだいたいが家族単位でのがれるのですが、ウクライナは父子や夫婦、家族が分断されているという大きな特徴もありました。

わたしにも3人子どもがいますけど、子育てってただでさえ大変じゃないですか。戦時下においては親と子が同じ場所で、息抜きもできずにずっと居続けなくてはならない。お母さんへの精神的負担はかなりのものだと思うんです。それが結果的に親子や家族関係に問題をつくるおそれもありました。

そこで、わたしたちはウクライナ西部の避難民への支援として、定期的な物資の提供をはじめました。ニーズの聞きとりをし、日用品や薬など要望のあるものをハンガリーで調達し、配りました。

炊き出しができる「キッチンポイント」(と呼んでいます)を5か所設置しました。その周辺の避難民キャンプには、子どもたちのための遊具やテレビを置き、お母さん方への負担を少しでも減らしてもらおうとしています。

一方、ハンガリーに避難しているウクライナ難民の子どもたちへは、心理的負担を減らそうと、絵本を贈っています。ウクライナ語の絵本で、母国語を忘れないようにという思いもあります。



「キッチンポイント」での炊き出しの様子



今、一番ニーズがあるのは薪です。現地の冬は厳しく、平均で4℃未満、一番寒いときは氷点下に達します。この時期の寒さをしのぐための薪は必須なんです。

そんななかで、ウクライナ西部で年金暮らしをしているおばあさんに話を聞きました。

「月に7000〜8000円の年金を支給されています。けれどこれだけじゃあやっていけない。今月は寒さを我慢して、食料を買うの。次の月は食料を我慢して、光熱費を払うわ」

もともとウクライナ西部は貧しいひとが多く住むエリアです。年金をもらって生活している地元の方がこんな生活をしているんだから、避難をしているひとたちは……? 想像に難くないですよね。最近では、国からの年金の支給も滞っているそうなので、このおばあさんも心配です。



支援対象者へブリケット薪(ストーブ用)を配布



ウクライナ西部の子どもたち。教育が遅れている現状があります。ウクライナ政府がオンラインでの授業を求め、それを先生方も一生懸命やられていますが、すべての子どもたちがアクセスできるわけではない。

日常の中に鳴り響く空襲警報。こんな非日常の事態が、日常になってしまっています。子どもたちの精神的負担も計り知れないものがあります。

そんな状況下でも子どもの自尊心を育てたいと、ウクライナ西部の非難民キャンプで暮らしているある少女に、「キッチンポイント」でのお手伝いをお願いしました。

学校にも行けずに友だちにも会えず、お父さんに会いたいと日々悲観にくれる状況ではあったものの、「できることがある」ということはその人の力を大きく伸ばすものだと思います。

この活動を始めた頃の僕が、まさにそうでしたから。



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第3回につづく



▼鬼丸さんが活動をする「テラ・ルネッサンス」の詳細はこちら



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